長期バリュー投資用メモ(3/6)

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個人投資家。元Yahoo!株価予想達人。
同サイトで25歳で「ベストパフォーマー賞」「通算最高勝率者賞」受賞。2006年ルービックキューブ日本大会準優勝。MENSA会員。座右の銘はヘンリー・フォードの「本当の失敗とは、失敗から何も学ばないことである」

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長期バリュー投資用に、今週の重要そうなニュースをまとめます。

アメリカとイスラエルがイランを攻撃、石油の通り道が封鎖された

世界の石油の5分の1が通る「ホルムズ海峡」という海の通り道があります。イランが「ここを通さない」と宣言して、実際にタンカー(石油を運ぶ巨大な船)の9割が止まりました。

日本は石油の約9割をここから輸入しているので、直撃です。原油価格は13%上がり、日経平均は3日で7.8%下がりました。

もしこれが数週間で終われば一時的なショックです。でも1ヶ月以上続けば、「石油をどこから買うか」という世界の仕組み自体が作り直されます。日本のGDPを0.3〜0.6%削る可能性もあります。

企業価値へのインパクトとしては、短期で終われば市場への影響はおおむね巻き戻されます。長期化すれば、エネルギーサプライチェーンの恒久的な再構築を引き起こし、エネルギー輸入に依存するアジア経済(日本、韓国、インド)に対する構造的なコスト逆風となります。

アメリカの最高裁が「大統領が勝手に関税をかけるのは違憲」と判決

トランプ大統領はこれまで「緊急事態だから」という法律を使って、議会の承認なしに関税(輸入品にかける税金)をかけていました。最高裁が「それはダメ。関税は議会が決めること」と判断しました。

これで大統領が突然「明日から関税50%!」とやることはできなくなりました。企業にとっては、予測不能な関税リスクが減ったことになります。ただし、すでにかかっている自動車25%や鉄鋼50%の関税は別の法律に基づくので残ります。

これは一時的な判決ではなく、憲法の解釈という「永久に有効なルール変更」です。今後どの大統領でも同じ制約を受けます。もはや関税リスクは「大統領の気分次第」ではなくなりました。

ただし、7月中旬を境に、関税率が15%のまま残るのか、ゼロに落ちるのか、別の根拠で復活するのかが不透明なままです。従来は「大統領がいつでも関税を変えられる」という(ある意味シンプルな)リスクでしたが、今は「議会の立法プロセス」「司法の判断」「行政の調査タイムライン」という3つの異なる時間軸が絡む複雑なリスクに変わった気がします。

NVIDIAの「一人勝ち」が終わった?

AIの計算に使う半導体チップ市場で、NVIDIAがほぼ独占していました。今週、AMDがMetaとOpenAIから合計600〜1,000億ドルの巨大契約を獲得しました。ブロードコムもGoogleやAnthropicなど6社にカスタムチップを供給していることが判明しています。

つまり、大手AI企業が「NVIDIAだけに頼るのはやめよう」と本気で動き出したということです。

これまで、NVIDIAの強みは「他に選択肢がない」ことでした。それが「選択肢はある。NVIDIAは最高だけど唯一ではない」に変わりました。AMDの株式ワラント付き契約は、顧客との深い戦略的ロックインを生み出しており、製品サイクルでは元に戻りません。業界は「汎用GPU(NVIDIA/AMD)対カスタムシリコン(ブロードコム/マーベル)」に二極化しつつあります。

Blockが社員の40%をAIで置き換え、株価20%上昇

決済会社Blockのジャック・ドーシーCEOが、社員4,000人(全体の40%)を削減しました。理由は「社内AIツールで仕事が自動化できるようになったから」です。市場はこれを歓迎し、株価は20%上がりました。

Amazon(16,000人追加削減)、eBay(800人)、ダウ・ケミカル(4,500人)も同時期に削減を発表しています。2026年のテック業界レイオフは1日あたり815人ペースです。

つまり、「AIで人を減らせば株価が上がる」という成功事例ができてしまいました。他のCEOも「うちもやろう」と思うインセンティブが生まれています。知識労働が中心の会社ほど、利益率が構造的に上がる可能性があります。ナレッジ集約型ビジネスのターミナルバリューモデルに組み込まれた労働集約度の前提が恒久的に変わり、特に国際的な競争を強いられている企業は「人を減らさないと厳しい」競争環境になりそうです。ローカルで競争している会社は、しばらく大丈夫そうですが。

AnthropicがペンタゴンのAI兵器利用を拒否、売上倍増

Anthropicが自社AIモデルの自律型兵器・大量監視への使用を拒否し、ペンタゴンにブラックリスト登録されました。しかし市場はこの原則的な姿勢を評価し、年間換算売上は約90億ドルから約200億ドルに倍増。エンタープライズAI市場シェアは1年前の約4%から40%に急上昇しました。

現在、「無制約の軍事AIを提供する企業」と「しない企業」の間で、AI市場が分断しています。このポジショニングの差が今後の成長性を左右する可能性があります。

根拠もなくなんとなく「民主主義は戦争を嫌うもの」というイメージがあ離、Anthropicは良い方向へ行っているんじゃないかという気もします。

メディア統合の最終局面——1,110億ドルのパラマウント・WBD合併

WBDがパラマウント・スカイダンスの1株31ドル全額現金オファー(企業価値1,110億ドル)を受け入れました。ハリウッドの大手スタジオ2社が統合し、ストリーミングはほぼ3社寡占構造に再編されます:Netflix対パラマウント・WBD対ディズニー。

再編を通じて寡占化が進んでいます。競争が穏やかになれば企業価値は高まりそうですね。

FRB議長交代と金融政策の不確実性

ケビン・ウォーシュのFRB議長指名が上院に送付されました。PCEインフレ率は年率4.4%(目標2%を大きく上回る)で、FOMC議事録では複数の参加者が利上げの可能性にも言及しています。パウエルの任期は5月15日に満了しますが、承認には共和党内からの反対(ティリス上院議員)という障害があります。

ウォーシュが承認され、トランプの望む積極的な利下げが実現すれば、金融政策の独立性における根本的な転換を意味します。すべての企業のターミナルバリューに組み込まれた割引率とインフレ期待に直接影響しますので、これからの動向が気になります。

高市首相が日銀にリフレ派を送り込んだ

高市首相が日銀の審議委員に、金融緩和を支持する学者2名(浅田統一郎、佐藤綾乃)を指名しました。安倍政権時代と同じように、日銀の中を「利上げしにくい」方向に変えようとしている動きです。これを受けて円は約157円/ドルまで下がり、3月の利上げ確率はわずか6%に低下しました。

ただ、企業価値へインパクトがあるかと言われるとまだ分かりません。金融正常化の「速度」を遅らせる可能性はありますが、「方向」を逆転させるかはまだ分からないからです。定着すれば、誰がボードにいても利上げの圧力は消えません。恒久的な変化かどうかは高市政権の持続性と賃金動向次第です。

春闘の賃上げ要求が約6%

労働組合の賃上げ要求は平均5.94%で、企業側の回答は5%〜10%と幅があります。セブン&アイや野村證券が5%、三菱地所が10%です。正式な結果は3月12〜13日に出ます。

3年連続5%超が実現すれば、日本の「賃金が上がらない」前提が崩れます。デフレ前提で成り立っていたビジネスモデルのターミナルバリューは確実に毀損されます。人手が余っている時に強かったビジネスモデルは弱くなるでしょうし、逆に人手が不足している時に強まるビジネスモデルは強いでしょうね。

Rapidusに17億ドルの追加出資

日本の次世代半導体メーカーRapidusが、ソニー・トヨタ・ホンダ・ソフトバンク・キヤノン・NTTなど32社から17億ドル(約2,700億円)の資金を集めました。政府も株式11.5%と「黄金株」(拒否権付き株式)を取得しています。量産に必要な約350億ドルの半分近くまで来ましたが、2nmの量産目標は2027〜2028年です。

成功すれば台湾依存という日本の最大の戦略的脆弱性を軽減する構造的変化です。ただし資金も技術的ハードルも依然として高く、「うまく行ったら良いな」くらいで見ています。

まとめ

普通の週は「株が上がった下がった」で終わります。でもこの週の出来事のうち少なくとも3つは、ゲームのルールそのものが変わったレベルの大きな出来事でした。

一番シンプルに言うと:

  • 関税のルールが変わった(大統領の自由にできなくなった)
  • AIチップの勢力図が変わった(NVIDIA独占の終わり)
  • AIで人を減らすのが「正解」になった(株主が報いるテンプレートの誕生)

日本はホルムズ危機(エネルギー)、関税問題(輸出)、金融正常化(日銀)のすべてが同時に押し寄せていて、世界で最も多くの交差点に立たされています。

イラン戦争は最大のインパクトかもしれませんが、短期で終わるか長期化するかで意味がまったく違いますし、経過観察が必要ですね。

近況報告

ちょっとした試みとして「Deep Research断ち」をしています。

Deep Researchというのは生成AIで使える情報集ツールですね。AIに依頼すると100以上のサイトを周回してレポートを作ってくれるという超強力なツールです。

僕もこの機能を使いまくっていて、もはや「使えない生活なんて考えられない」くらいなんですが、企業価値を分析する時にはちょっと使いにくいんですよね。

一番使いにくい理由は「フォーマットに従わない」点で、「このフォーマットでソースを明記して」と指示しても従ってくれないんですよ。

だからレポートを作成した段階でソースが欠落してしまって、どんどん出所不明の情報で埋め尽くされていってしまうんですね。

大学に入ると「情報収集は一次情報を辿るのが基本だよ!」ということは誰でも学ぶはずなんですが、この基本的な部分が欠落してしまうとレポートそのものの信憑性が薄れてしまうんで何を書いても意味なくなっちゃうんですよね。土台もなしに空中戦になってしまうので。

だから泣く泣くDeep Researchをやめて、通常チャットでリサーチすることにしました。手間も時間もかかるんですが、企業分析で最も重要なのは「情報の信頼性」ですから、ここは面倒でもそうするべきかなーと思いました。

いよいよClaude Codeが僕の手を離れて企業分析できるようになりつつあります。子供を育てる親のような気分です。「手間をかけて育ててきてよかった〜」と感動しています☺️

追伸

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